口頭意見陳述について

 

     *近畿厚生局での対応をもとに記載しています。

 「審査請求の趣旨及び理由」提出後数か月(3~5カ月)すると保険者の意見書が審査官の下に送られ、写しが請求者に送付されてきます。
 その後「口頭意見陳述」を希望する場合(開催するかどうかは任意です)には8~14日程度先までに連絡をしてくるように言われます。口頭意見陳述を希望する旨伝えると2週間程度の間に保険者への質問を事前に書面で提出するように求められます。近畿厚生局の場合、その後数日して口頭意見陳述を行う日程調整の電話が入ります。空いている場合は直近1か月以内の期間内での調整が可能です。

 保険者への質問及び意見書への反論については、提出した「審査請求の趣旨及び理由」と保険者の主張とを読み比べ、改めて保険者の意見書への反論を行っていきます。質問状提出の際、追加の主張があれば別紙を追加します。追加資料の添付も可能です。

 

 

口頭意見陳述

指定された時間前(15~20分)に会場(近畿厚生局)につくようにします。待機スペースで暫く待たされた後、保険者代理人とオンラインで接続されると実施スペースに案内されます。

              >>>近畿厚生局 室内

 社会保険審査官より、実施時間は30分程度である旨及び録音をする旨冒頭で説明があります。保険者代理人は質問に対する回答のみを読み上げていきます。回答に対する質問がその都度できるわけではなく、一通り回答が終了したのちに質問の機会が与えられます。
 保険者代理人が質問の回答とならないような回答を繰り返す場合が多々あります。重ねて質問を繰り返すことも可能ですが、同じ陳述・質問が続くと審査官に止められてしまいます。

           >>>口頭意見陳述 室内 配置図

 口頭意見陳述終了後、保険者とのやり取りを受け反論が必要となる場合はその旨審査官に伝え、主張の追加提出を待ってから決定してもらえるようにします。
 但し、その場合決定迄の期間がさらにずれ込んでいくことになります。
 なお、決定書が届くまで、審査請求書の提出から6か月前後となります。

 

注意事項

○ 口頭意見陳述は非公開のため録音や撮影はできません。

*非公開のためボイスレコーダー等の持ち込みは一切できません。

○ 保険者代理人の回答が早く要点を控えるのは不可能に近いです。

事前に保険者の回答をある程度予測して置く必要があります。重ねて行う質問も数パターン用意しておき、簡単なメモで適宜要領を得た質問ができるよう綿密な準備が必要です。

○ 保険者側に対し、「どのように考えているのか」「解釈上の矛盾」等を指摘しても「総合的に判断」の一言で逃げられることがほとんどです。

 保険者代理人が認めるのは、認定基準やガイドラインに書かれた内容です。そもそも意見陳述において「等級判定につながるような明確な回答は行わない」と冒頭説明があります。

○ なお、認定調書に関する質問には一切回答を行ってもらえません。 あくまでもい保険者の「意見書」への反論、質問を行っていきます。

 

口頭意見陳述に向けて

 保険者からの意見書を何度も読み論点を絞り込みます。こちらが提出した「審査請求の趣旨及び理由」に正面から答えず、認定調書にある不支給理由を記載してくる場合がありますので、こちらの主張を有利に展開できるよう切り口を変えて、重ねて質問を行っていきます。
 たとえ審査請求で決定が覆らなくても、再審査請求にこちらの主張を強固にできるよう保険者からの言質を得られるよう攻め手を考えていく必要があります。

 なお、審査請求では社会保険審査官という事務官が独断で審査し決定をします。保険者が出してきた意見書のまま決定書を書いてくることがほとんどです。
 

容認…申請内容を受け入れる。
棄却…申請内容を受け入れない。
却下…審査請求が適法でないと判断。 
審査請求から決定が出るまでの期間は、口頭意見陳述を行うかどうかによっても左右されますが、だいたい4か月から半年程度です。

 

 口頭意見陳述の音声データの開示請求について

 口頭意見陳述終了後、審査官は聴取書を作成した後にデータを消去します。
 なお、厚生局によってはこの口頭意見陳述の音声データを開示してくれるところがあります。基本的には、決定書を作成する前の音声データは行政文書ではないため開示請求をしても手に入れることはできません。少なくとも、近畿厚生局では開示を行っていないとのことです。

 以上の事から、審査官の聴取書と実際に行われた口頭意見陳述の内容にどのような相違があるか検証のしようがありません。口頭意見陳述の結果、請求者が求める内容が取り上げられないこともあります。また、どういった発言をどのように取り上げるか、もしくは取り上げないかも審査官次第です。取り上げられない部分は今後一切表には出てこない可能性もあります。

 

 社労士による口頭意見陳述について

 正直、社労士でも不服申し立て業務を受任しても、審査請求時の口頭意見陳述まで対応するところは少ないようです。また、口頭意見陳述に出向く際には別途追加料金を請求する事務所もあります。
 診断書、申立書、請求者の年齢等、請求者の属性や診断書と申立書の整合性等により医師照会の有無が変わってきます。考え方はいろいろあると思いますが、保険者の審査の傾向をつかむためにも、面と向かって保険者から生の情報が引き出せる口頭意見陳述に参加しても損はないと思います。


 なお、当事務所では、審査請求時の口頭意見陳述については交通費以外追加料金は頂いておりません。

 

 

 

2025年07月16日