障害年金で不支給決定を受けた場合、不服申し立てをすべきか

1. 障害年金の不服申し立てとは

 障害年金の申請(裁定請求)を行った結果、「不支給(却下)」になったり、「想定より低い等級に認定」されたりした場合に、その決定に対して異議を唱え、再検討を求める法的な手続きです。


 不服申し立ては2段階の構造になっています。

〇 第1段階:審査請求(地方厚生局の「社会保険審査官」に対して行う)

〇 第2段階:再審査請求(審査請求の結果にも不満がある場合、国の「社会保険審査会」に対して行う)

 

2. 不服申し立てを「すべき場合」と「やるべきではない場合」

 不服申し立ては、不支給決定を受けたら、「とりあえずやらなければ損」「やらないよりもやった方がよい」という理由だけでやるような手続きではありません。

 「勝てる見込み」があるかどうかを見極める必要があります。

 

⭕ すべき場合(勝てる見込みがあるケース)

 決定結果と診断書の内容に明らかなズレがある

 医師が書いてくれた診断書は重い症状を示しているのに、年金機構側がそれを過小評価して不支給や低等級にしたと考えられる場合。
*但し、診断書と申立書の内容又は、通院期間や病歴との間に整合性が取れていない場合、対応は異なってきます。診断書の内容が重ければ良いというわけではありません。

 

 障害認定基準の適用誤りがある

 提出した資料が、国の定める「障害認定基準」の何級に該当するかが客観的に明らかなのに、行政側が判断を誤っている場合。
 *精神疾患の場合は「総合評価」となりますので、上記理由での反論はあまり意味を成しません。

 

 不支給理由に対する論理的な反証ができる

 示された不支給理由に対し、「診断書のこの記載に基づけば、その理由は的外れである」と客観的に反論できる場合。
 *精神疾患の場合、ガイドラインに照らし合わせ合理的でない場合が多々ありますが、「総合評価」を前提としているため決定が覆ることは少ないです。

 

❌ やるべきではない場合(不服申し立てが向かないケース)

 診断書の内容自体が軽い

「体調は悪いが、提出した診断書の記載内容自体が軽い(あるいは認定基準に達していない)」という場合。


 初診日の証明がそもそも弱い・できていない

 却下された理由が初診日の不特定である場合、不服申し立てで覆すのは極めて困難です。

 

「情」に訴えようとしている

「経済的に苦しい」「本当に体調が悪くて困っている」といった主観的・感情的な理由は一切考慮されません。

 

【対策】 やるべきではないケースに該当する場合は、不服申し立てではなく、医師に診断書を書いてもらい直すなどして「再申請(新規のやり直し)」を行う方が現実的です。

 

3. 不服申し立てをする場合に「必要なもの」や「ポイント」

厳格な期限の遵守
 ▷審査請求: 不支給などの「決定があったことを知った日の翌日」から3か月以内。  ▷再審査請求: 審査請求の決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内。

 審査請求書(書面) 指定の様式(行政機関のHP等からダウンロード可能)に、請求人の情報や「審査請求の趣旨及び理由」を記載します。 論理的な反論・反証(裁判に近い思考) 初回申請時の「診断書」や「病歴・就労状況等申立書」を引っ張り出し、国の「障害認定基準」と照らし合わせ、「行政のどこに判断ミスがあったのか」を法律・医学的根拠に基づいて論理的に説明する文章力が必要です。

 

 

*生成AIを利用して書類を作成することも可能ですが、請求人自身が障害年金制度の概要や認定基準を深く理解していないと、実際の症状や病態からかけ離れた「見た目が整っているだけの文章」になってしまいます。 請求人にとって障害年金の請求は「人生に一度あるかないか」の経験ですが、審査側は毎日膨大な書類に目を通しています。AIが作成した文章は、審査側が見ればすぐに分かります。 AIの利用自体が不支給(棄却)の理由になるわけではありません。しかし、審査側は「AI作成の文章である」ことを見抜いた上で判定を行います。そのため、見た目は綺麗でも、診断書の内容と整合性が取れていなかったり、主張が単なる一般論や的外れなものになっていたりすれば、いくら言葉を尽くしても全く聞き入れられない(正当に評価されない)恐れがあります。

*再審査請求において、審査請求で主張した内容が、ご自身に不利な要素として取り扱われないよう、細心の注意が必要です。

 

 処分理由の正確な把握(保有個人情報の開示請求)

 なぜ不支給になったのかの理由が通知書だけでは不透明な場合、厚生労働省に「開示請求」を行い、審査の内部資料を取り寄せて分析する必要があります(取り寄せに約1ヶ月かかります)。

 

⚠️ 注意:新たな診断書の追加は原則意味をなさない

 不服申し立ては、あくまで「初回申請時に提出した資料」をベースに、当時の判断が正しかったかを審査する制度です。後から「実際の症状はもっと重い」と医師に診断書を書き直してもらったり、追加したりしても、原則として考慮されません。ただし、「働いていたと誤解された時期に、実は出勤していなかった」ことを証明する出勤簿などの「事実関係の裏付け資料」であれば、追加提出が有効な場合もあります。

 

実際に認められる確率「容易ではない」理由

 障害年金の不服申し立ては、一般に想像されるよりも遥かに難易度が高く、容易ではありません。 認められる確率は「約1割(10%前後)」 程度にとどまります。残り約9割は「棄却(主張が認められない)」となります。

▷「身内の審査」という壁
特に第1段階の審査請求は、厚生労働省の組織内(地方厚生局)の審査官が判断するため、行政側の身内による再チェックという側面があり、判断を覆すのは容易ではありません。

▷膨大な時間と精神的負担(長期戦)
審査請求の結果が出るまでに一般的に半年〜1年程度、そこから再審査請求に進むとさらに時間がかかり、総合して1年以上の長期戦になることがザラにあります。結果を待つ間の生活設計や精神的な負担は非常に大きなものになります。

▷素人では太刀打ちしにくい専門性
「結果に納得がいかない」という感情的な訴えは完全に門前払いされます。「障害認定基準」を完璧に読み解き、行政の審査ロジックの破綻を突くという“書類作成・分析能力が求められます。

 

「不服申し立て」だけを受ける社労士は少ない?

 昨今、障害年金請求はご自身でされ、不支給だった場合、不服申し立ては手に負えないので社労士に依頼する、という方が増えています。特に精神疾患の場合はSNS等に情報が氾濫しており、一見自分で手続きができるような気になる方も多いようです。

但し、ご自身で請求をして不支給だったから不服申し立てだけ依頼して引き受けてくれる社労士は、意外と少ないのが実情です。
 ネット上では「不服申し立て代行!」を掲げている社労士は多いですが、実際に契約までに至るのは、不支給理由が認定基準等を照らし合わせ、よほど理不尽な解釈をされている場合に限定されます。

 そもそも、提出している書類に不備がある場合、医師が協力的で意見書等を入手できる場合以外、先に提出した書類をもとに争うことになるため、決定が覆ることはありません。
 さらに不服申し立ての容認率からいって、10人が不服申し立てを行ったとして、満足のいく結果を得られるのは1人乃至は2人(正確には1.5人)程度です。
 期間は1年半~2年を要します。

 なお、依頼する際には着手金が30,000~50,000円程度必要となります。

 

以上のことから、残念ながら、「とにかく結果が気に入らないからダメもとでも不服申し立てをしたい」、という要望に応える社労士は非常に少ないと思います。

 

 <結 論>

 障害年金の不服申し立ては、限られたチャンス(2回)しかなく、成功率はわずか1割という非常に狭き門です。 そのため、自分自身だけで闇雲に申し立てを行うのはリスクが高く、時間を浪費する結果になりかねません。

 とはいえ、社労士に依頼した場合、3万~5万(最低でも)の費用が発生し、原処分が覆る方は、極端な話10人のうちの1人、多くても2人程度です。ほとんどの方は時間とお金を無駄にします。

 現状の不支給という結果をみて「不服申し立てで戦うべきか」、あるいはスパッと切り替えて「再申請(やり直し)をすべきか」。障害年金は非常に複雑で、考えられている意外にも、以外と別の方法がるかもしれません
 一度の失敗であきらめてしまう前に、お近くの障害年金に精通した社会保険労務士に相談をしてみることをお勧めいたします。

 *不支給であっても、社労士に依頼することで受給につながる可能性はあります。

 ・併合認定を行う。
 ・社会的治癒の主張により国年から厚年に変更する
 ・診断書の正確な記入方法を医師に伝え、再請求を行う
 ・障害者特例を使う
 ・傷病名を見直し、別の様式の診断書で請求を行う 等

 

 

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