不支給にならないために!病歴・就労状況等申立書の書き方 AI活用の注意点
「病歴・就労状況等申立書」の作成のポイント
病歴・就労状況等申立書は、診断書と並んで「障害年金の審査において重要な書類」です。書き方によっては不支給になることもあります。何気ない記載が、初診日の認定に影響を与えたりもします。
不支給や等級非該当の理由として、この病歴・就労状況等申立書にご自身で書いた内容が理由として挙げられていることがあります。こうなるともう不服申し立てで覆すことは非常に難しいです。

1. 作成の基本ルール:時系列と期間区分
病歴・就労状況等申立書には、発病から現在までの状況を、数年ごとの「期間」に区切って記載します。
• 時系列の徹底
必ず「初診日(または発病)」から「現在」まで、古い順に記述します。
• 期間区分の考え方
医療機関を受診している場合、医療機関ごとに区切って記載していきます。その期間に受けた治療内容や、医師から受けた指示、症状、日常生活や就労の状況を記載します。
同じ医療機関に長く通っている場合、あまり期間が長くなりすぎると状況が伝わりにくくなりますので、おおよそ3~5年で区切って記載します。もちろん、症状や就労状況に変化が無く、取り立ててエピソード等もない場合は期間が長くなっても問題はありません。
通院していない場合は、自覚症状の程度、通院していない理由、就労の状況等を記入していきます。
【記入を簡素化できる場合があります】
20 歳前に初診日がある方のうち、以下の①・②に該当する場合は、病歴状況の記入を簡素化できます。
① 生来性の知的障害の場合は、1つの欄の中に、特に大きな変化が生じた場合を中心に、出生時から現在までの状況をまとめて記入することが可能です。
② 2番目以降に受診した医療機関の証明書を用いて初診日証明を行った場合(別紙「20 歳前に初診日がある方へ」参照)は、発病から証明書発行医療機関の受診日までの経過を、1つの欄の中にまとめて記入することが可能です。なお、証明書発行医療機関の受診日以降の経過は、通常どおり、受診医療機関等ごとに、各欄に記載を行ってください。
日本年金機構「病歴・就労状況等申立書の提出にあたって」より
発達障害や知的障害の場合
これらの傷病の場合、出生時からの記載が必要です。
各年代について、発達の過程と具体的な困りごとを記述します。
以下の項目を参考に、エピソードを具体的に盛り込んで行く必要があります。
1. 出生~幼稚園期 出産時の状況
正常出産か、未熟児・仮死など異常はあったか。
発達の遅れ: 歩行・言語の開始時期や、目線が合わない、
パニック、集団行動がとれない等の行動面の特徴。
2. 小学校・中学校期 学習面
つまずいた教科や内容(計算、漢字、文章題など)成績について。
対人面・その他: 友人関係のトラブル、いじめ、
教員からの指摘や指導の有無。
3. 高校・就労期 学校・進路
特別支援学校か普通校か、学習内容と成績、教師からの進路指導。
就労状況: 業種と内容、勤務時間の遵守、指示理解、作業スピード
同僚との関係、就労支援の要否。
4. 現在の状況・見通し 日常生活
家事全般の自立度、金銭管理能力、福祉サービスの利用状況。
情緒・健康: 精神的な安定度、こだわりによる支障、
パニックや粗暴行為の有無、服薬状況。
今後の見通し: 将来の生活や就労の継続性について。
※各時期において「何が困難だったか」「どのような支援が必要だったか」を具体的に描写することが重要です。
病歴・就労状況等申立書作成に、必勝パターンはあるか?
残念ながら、1人1人の傷病の違いにより、症状の経過や治療内容も変わってきます。必ずこう書けば大丈夫というひな型は存在しません。
初診証明が取れない場合等、初診日を証明する書類が無い案件では、初診日に関する情報を重点的に記載していきます。
等級認定に重点を置く場合には、治療内容や就労状況等に関する情報を重点的に記載します。
就労状況が等級認定の要件になっている傷病については、就労形態(一般就労か障害者雇用か)、仕事の内容、休職している場合はその期間及び回数、職場で受けている配慮等を具体的に記載していきます。
ご自身で作成された場合、痛い、辛い、しんどい等悲しい身の上話しを延々と細かな字で書き連ねているものがよくありますが、「辛い・しんどい」等は何ら評価の対象とはなりません。
ご自身の傷病に特有の症状を的確に認定医に伝えるため、治療内容や症状の経過等を中心に記載していかなければなりません。
精神疾患における 日常生活状況の伝え方
食事を例に挙げて考えます。
用意したものをとにかく食べている=「できる」にはなりません。
「診断書日常生活能力の判定」より
「1 できる」
栄養のバランスを考え適当量の食事を適時にとることができる。(外食、自炊、家族・施設からの提供を問わない)
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
だいたいは自主的に適当量の食事を栄養のバランスを考え適時にとることができるが、時に食事内容が貧しかったり不規則になったりするため、家族や施設からの提供、助言や指導を必要とする場合がある。
3 自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる
1人では、いつも同じものばかりを食べたり、食事内容が極端に貧しかったり、いつも過食になったり、不規則になったりするため、経常的な助言や指導を必要とする。
4 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
常に食事へ目を配っておかないと不食、偏食、過食などにより健康を害するほどに適切でない食行動になるため、常時の援助が必要である。
知的障害や精神疾患の場合は、援助が無いとそもそも何もできない場合、また援助をされても健常者の何倍もの時間を要する場合があります。
基本的にできる、できないの場合はこの援助が無い状態、一人住まいを考慮した上で考える必要があります。
病歴・就労状況等申立書に、迂闊に「食事はとれている」と書くと日常生活状況が軽く見られる可能性があります。また一旦記載した内容は、自己申告ということで、後で撤回することが非常に難しくなります。
誰が書くか
基本的には、請求人が記載しますが、家族が代筆をしても問題ありません。社会保険労務士に依頼することも可能です。
AIによる病歴・就労状況等申立書の作成について
AIを使って作成、修正することも可能ですが、令和8年現時点の段階では、AIで作成した内容では不支給となる確率が高いです。当事務所でも色々と検証を行っていますが、言葉のチョイスが偏っており、一見してAIが作成したものと判別できます。
もちろん、AIによる作成自体が不支給理由になるものではありません。
診断書の内容をある程度読み込ませれば、整合性をとることも可能ですが、修正をせずに出せるレベルではありません。「2級相当の内容」とAIが提案してくることもありますが、こうなると、もはやご自身の症状とはかけ離れた内容となってきます。
AIが提案する「2級相当の申立書」で受給ができるのか?
一昨年以来、重すぎる診断書、申立書はカルテ照会がかけられてくることがほとんどです。診断書の内容が「思い」か「軽い」かではなく、しっかりとご自身の症状が反映されているか、また申立書に記載された一語一句にご自身で説明が付けられるかが問題です。重く書けば受給に繋がるわけではありません。残念ながら、AIはご自身の症状を参考にするのではなく、ネット上に公開されている事例を収集して最適解を導き出そうとします。当然ながら、大抵の場合、診断書の内容とはかけ離れていきます。現時点でのAIの性能ではそのまま提出することは危険です。
出来上がった申立書の内容について何度も読み返し、理解できないもの(専門知識、誤診で説明のできないもの)は削除し、ご自身の言葉に逐一直してしいく必要があります。
チェックポイント
• 「診断書」との整合性
診断書に書かれた「症状の重さ」や「通院回数」と矛盾がないか確認してください。矛盾がある場合は、必ず「なぜそうなっているのか(例:体調不良で通院を中断したが、在宅で療養していた等)」を説明する必要があります。あまりに診断書と内容がかけ離れている、記載されている内容全てについて信憑性が下がります。また、基本的に記載内容がプラス材料になることは少なく、どちらかと言えば、何気なく書いた一言が不支給理由として取り上げられたりすることの方が多いです。
• 「空白期間」を作らない
治療を受けていない期間や、病院を変えるまでの期間があっても、その間にどう過ごしていたかを記載する必要があります。
• 就労状況を詳細に
働いている場合、「会社からの配慮」を必ず書きましょう(例:残業免除、デスクワークへの変更、短時間勤務など)。「働けている=軽症」と判断されないために職場の上長からの申立書を添付する場合もあります。
•調子が悪い時を基準に書く
出来ることを書く必要はありません。調子が悪い時に日常生活や就労する上での不便さを中心にできないことを書いていきます。家族のサポートがあって日常生活が送れている場合は、受けているサポートの内容及び頻度を記載します。
•認定基準・ガイドラインの内容を意識して書く
やみくもに書いても、分量の割には期待したほどの効果が得られないことがほとんどです。認定医が診断書や申立書のどのような個所を重点的にチェックをし、それが等級判定にどうつながっているかを把握した上で記載していく必要があります。
*残念ながらこの点は不服申し立てを数多くこなしている社労士でないとなかなか判定のポイントが分かりません。現時点では、AIを使っても、参考となるデータ量が少ないこともあり、個別事案に対応した回答は得られません。
•関係のないことは書かない
申立書において、不幸な境遇や感情的なエピソードを長々と書き連ねることは、審査において意味がありません。審査側が重視するのは「同情」ではなく「生活や仕事における具体的な制限」の有無です。色々と書きたい気持ちもわかりますが、長文は読みにくいだけで、意図が伝わりにくくなります。相手が理解しやすいよう、簡潔な文章を心がけましょう。症状や日常生活における制限や困りごとが、審査側に正確に伝わるよう、言葉選び(ガイドラインを意識した)や構成を工夫することが大切です。
精神疾患では、病歴・就労状況等申立書において、日常生活状況があまりに簡素化されている場合、「日常生活及び就労に関する状況について」の照会が来ることが多いです。
病歴・就労状況等申立書も含め、とにもかくにも上げ足を取られないよう注意が必要です。
作成の流れ
1. メモ作成: まずは、何年に何があり、どんな症状だったかを時系列でメモ帳に書き出します。
2. 診断書の写しと照合: 医師に書いてもらった診断書と、自分の記憶にズレがないか確認します。
3. 期間ごとの下書き: 各期間について、「日常生活」「就労・学校生活」「通院状況」の3項目を意識して下書きします。
4. 推敲: 第三者(家族や福祉関係者など)に読み上げてもらい、状況が具体的に伝わるか確認します。
*年金事務所に相談に行くことも可能です。ある程度のアドバイスは受けることができますが、それはあくまでも体裁を整えるためのものです。中身に関して、個別具体的なことまではサポートを受けられません(深くかかわると、不支給の場合、職員の責任に転嫁される可能性があります)。
また、ご家族や福祉関係者についても、読みやすい、まとまっている、分かり易いという程度の確認は可能かと思います。
支給に繋げるためのテクニックを持っているのは社労士だけです。
なお、社労士に請求代行を依頼した場合、ご依頼者の手間は「メモ作成」までです。後の作業は社労士が行います。
まとめ
病歴・就労状況等申立書をご自身で作成しようと、社労士事務所のサイトをみると作成のポイントとして、「読みやすい文章を書く」「エピソードを交えて書く」「日常生活で困っていることを集中的に書く」等挙げていますが、この程度のアドバイスで具体的に申立書が作成できるでしょうか?
「エピソードってどんな?」「日常生活の何を前面に出して、どういう風に訴えかけていけばいい?」、結局は、お一人お一人の状況がすべて異なるため、明確な「書き方、必勝パターン」はありません。
ご自身で請求される方の多くは、あやふやな理解のまま見様見真似で申立書を作成します。医師が「2級相当の診断書を出してあげる」という言葉を信じ、9割以上はもう受給できるものと思い、とりあえず必要だからと形だけの病歴・就労状況等申立書を提出した結果、不支給となる例が増えています。
病歴・就労状況等申立書は、とにかく出せばいいものではありません。障害年金請求が書類審査である以上、誰にでも簡単に作成できるものではありません。ご自身で作成される場合、最低限「足を引っ張られない」ような内容にしなければなりません。提出してプラスにならいのであれば、せめてマイナス要素にならないよう工夫が必要です。
病歴・就労状況等申立書に記載した内容が、不支給理由として挙げられていた場合、自己申告である以上もはやどうしようもありません。
診断書の内容をより強固に補足していこうとした場合、認定基準及びガイドラインをしっかりと理解したうえで記載していく必要があります。認定医(保険者)は認定基準やガイドラインに記載された基準、要素がどの程度盛り込まれているかをチェックしていきます。1件当たりの審査時間は数分レベルです。そのわずかな時間で、いかに効率よく認定医に、受給につながるような情報を提供できるかによって、支給・不支給(非該当)が決まります。
病歴・就労状況等申立書は誰にでも書けます。だからこそ、請求件数も増え、不支給件数も増えています。
障害年金請求は、一旦不支給になると不服申し立てで覆すのは至難の業です。処分が取り消されるのは10分の1程度です。
期間を空けて再請求をした場合も、間違いなく、前回提出した書類が持ち出されてきますので、不都合なことを記載しているとその後の請求に影響を与えます。
事後重症請求と違い、認定日請求(遡及請求)については2度目はありません(よほど客観的な追加資料でもない限り)。
以上、社労士が公開しているサイトで情報を収集もしくはAIを活用されるのも手段の一つですが、精神疾患で、特に遡及請求をされる場合は迷わず近隣の障害年金を専門としている社会保険労務士にご相談されることをお勧めいたします!









