精神の障害用診断書を受け取った際、適切に障害等級が反映される内容になっているかを確認するためのチェックポイントを解説します。
日本年金機構は、疾患名、病歴、治療経過、病状の内容と日常生活能力の評価が、齟齬や矛盾なく整合しているかという点に最も着目します。
診断書⑩ウ 「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」
請求をされる方が真っ先に確認するのが「日常生活状況」です。ご自分の症状が「軽く書かれている」とよく言われるのは、たいてい下記の判定と程度をみての感想です。
*医師が診断書を渡してくれる際によく言う、「2級相当の診断書を書いておいたから」というのも、この判定と程度の数字合わせが根拠となっています。

具体的には、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に等級の目安のの見方が乗っています。
但し、表題にも書いていますが、あくまでも「目安」です。
判定平均が3.2で程度が(4)であれば2級相当の年金が支給されるわけではありません。
医師が「2級相当の診断書を書いた」というのは、「目安、2級相当の診断書を書いた」ということです。保険者はこの数字を総合評価の参考にはしますが、これだけで等級が決まるわけではありません。
診断書⑩ 「障害の状態」
ア「現在の病状または状態像」については該当するすべての病状または状態像に〇印をつけてもらいましょう。「うつ病」の場合、Ⅰの「抑うつ状態」のみで該当している個所に〇をつけられる場合もありますが、申立書等でASDやADHDの症状もみられる場合はⅧ「発達障害関連症状」にも〇印をつけてもらうべきです。
また、現状日以前1年程度での障害状態で記載してもらう必要があります。現症日時点での症状とされた場合、その他の欄との整合性が取れなくなる場合があります。
イ「左記の状態について、その程度・症状・処方薬等を具体的に記載してください」の欄については、診断書を書きなれている医師とそうでない医師との差が顕著に表れてきます。
医師が何気に書いた一言が、マイナス(軽いとの評価)につながる場合もありますので、ご自身の症状と照らし合わせたうえで、適切でない表現がなされていた場合は修正等ご相談されることをお勧めいたします。
日常生活能力の判定・程度が重い(2級相当)であるにもかかわらず、上記ア・イの記載が非常に薄い(要は内容が無い)診断書が出来あがってくる場合があります。半年、1年と通院を続けていても、カルテに書くべき材料が乗っていないと、単なる数字合わせ(目安だけ2級に)の診断書が出来上がりまる。
結果的にカルテの開示請求や追加書類の提出を求められることになります。
この場合、審査期間は2~3カ月確実に延びます。
⑪「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」
診断書⑪欄は、「現症時」において日常生活や就労状況がどの程度の状態であるのか保険者側に伝える重要な箇所です。
記載要領には「現症時において日常生活がどのような状況であるのか、また、どの程度の労働ができるのか(実際の就労の有無ではありません)などをできるだけ具体的に記載してください。
⑩エ「現症時の就労状況」欄に記載された就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していると考えられる場合には、その日常生活活動の状況をできるだけ詳しく記載してください。」と記されています。
但し、実際に仕上がってきた診断書には、「就労は難しいと考えられる」とだけ記載があり、日常生活状況について一切書かれていない場合があります。また「家族の援助で日常生活が成り立っている」と記載されると、ADLが保たれているとして2級非該当となる場合もあります。
その他 診断書記入欄について
・診断書①「障害の原因となった傷病名」
傷病名が神経症圏の病名であると、確実に不支給になります。
(診断書⑬でフォローは可能)
ICD-10コードの記入は必須です。
主たる傷病名から順に記入することとされています。ただし、主たる傷病名から順に記入するのは、発病日と初診日が違う時だけです。
・診断書⑦「発病から現在までの病歴…」
診断書の「⑦欄」も、認定の可否を大きく左右する非常に重要な項目です。 診断書の作成依頼にあたっては、精神保健福祉士(PSW)などが事前に日常生活の状況について聞き取りを行ってくれるクリニックもあります。
しかし、そうしたヒアリング体制がない場合は、これまでの通院歴や具体的な症状、日常生活で困っていることなどをまとめた「メモ書き(参考資料)」を作成し、医師へ渡しておくことをおすすめします。
診断書の③や⑨欄と整合性が取れているの確認も必要です。
「うつ病」や「統合失調症」等での請求の際に、それ以前に神経症と診断書されていた事実等があると、初診日の変更を指示される場合があります。
神経症(F4)とその他の精神疾患(F2やF3など)に医学的・請求上の関連性を認めるかどうかは、請求者側と保険者との間で意見が大きく分かれる、非常に繊細で難易度の高いポイントです。
神経症での初診…厚生年金
うつ病での初信…国民年金 の場合
当然ながら、厚生年金初診日の方が請求人には有利です。
逆に保険者にとっては、神経症とうつ病を切り離し、うつ病を初診とした方が有利(年金額は少ない)です。
ゆえに、保険者は「神経症は対象とならない」と主張し、初診日の変更を求めてきます。
逆に
神経症での初診…国民年金
うつ病での初診…厚生年金 の場合
この場合、保険者は神経症での受診が初診日だと言ってきます。
(上記は当事務所での請求事例を元にしています)
こうした実務上の議論や見解の相違は、決して珍しいことではありません。
だからこそ、請求者側に有利な展開へ導くためには、診断書と申立書のストーリーをあらかじめ緻密に組み立てておくことが不可欠です。
診断書における表現や文言の選定に細かく留意することはもちろん、保険者が不支給や初診日否認の理由にしてきそうな材料を事前に排除し、申立書の中でその論点を先回りして打ち消しておく(反論の芽を摘んでおく)必要があります。
上記以外にも、「治療歴」「身体所見」「臨床検査」「福祉サービス利用状況」など、記載すべき事項と記載を避けるべき事項が存在します。 不要な情報のうち、請求者側に有利な記述は見落とされる(考慮されない)傾向がある一方、保険者側に有利と捉えられる記述は、不支給の根拠として厳しく追及されるリスクがあります。
その結果、その記述を打ち消すために不服申し立てを行い、2年近くにわたる争いを余儀なくされるケースも少なくありません。
以上、診断書の作成依頼は、単に「医師にお任せするだけ」では不十分な場合が多く、病歴・就労状況等申立書以上に細かな配慮が必要です。少なくとも、診断書の記載要領を熟読し、ガイドライン等を深く理解したうえで医師に依頼する必要があります。
また、診断書と申立書は独立したものではなく、2つで1つの書類として審査されます。両者の整合性を保つことは基本ですが、万が一作成された診断書に不備や実態とのズレがあっても、医師に修正を依頼し応じてもらうのは容易ではありません。
診断書や申立書の作成において少しでもご不安や疑問がございましたら、お近くの障害年金を専門とする社会保険労務士へご相談されることをおすすめいたします。