「障害年金の請求は、社労士に頼んだほうがいいのでしょうか?」 非常によくいただく質問ですが、私の答えは明確に「イエス」です。
特に、過去に遡って受給を目指す遡及請求(認定日請求)を検討されている方は、必ず専門の社会保険労務士にご相談ください。なぜなら、遡及請求は一度失敗すると二度目がない「一発勝負」の世界だからです。
「とりあえず自分でやってみて、ダメなら次は社労士に頼もう」、この考えは、遡及請求では通用しません。
1. 「事後重症」と「遡及請求」の決定的な違い
「不支給になっても、再度やり直せばいい」という理屈は、実際問題、現在の状態で請求を行う「事後重症請求」にしか当てはまりません。
• 事後重症請求
不支給でも、1年以上あけて診断書を取り直せば再請求が可能です。
• 遡及請求(認定日請求)
過去の「認定日」時点の診断書は、当時のカルテがすべてです。一度提出した内容を後から「実はこうでした」と修正しても、認められる確率は極めて低いです。修正して出せる、であれば、なぜ最初からその診断書を出せなかったのかという話になります。診断書の内容が前回に比べ症状が重いのはなぜか(当然ながら、前回も今回も元になっているカルテは同じです)。その理由を合理的な根拠を示し説明していくことから始めなければなりません)
2. 「出した書類」は何十年前のものでも保管されています。
年金事務所で「書けと言われた通り」に書いた申立書の一文が、後々まであなたを苦しめる場合があります。申立書には「書くべきこと」と「書くべきでないこと」があります。
日本年金機構は、あなたが提出した書類をしっかりと保管しています。 もし自己流の請求で不支給になり、後に再請求(遡及請求もしくは事後重症)を行った場合、機構は過去の書類を確認し、前の申立書との矛盾点を突いてきます。
3. 医師との「交渉」は不可能。事前の「準備」がすべて
再請求時に「前回作成したもらった診断書の内容が実態より軽い」、だから社労士から医師に依頼をして、「診断書を書き直させてほしい」という依頼がありますが、これはできません。医師との交渉を希望される場合は弁護士に依頼をする必要があります。
•法律の壁
社労士が医師と内容交渉を行うのは「非弁行為(法律違反)」です。
•医学の壁
医師と対等に渡り合える知識を持つ他士業(弁護士含む)は極めて稀です。
<日常生活状況について>
特に精神疾患の場合、医師は数十年も前の患者の日常生活など知る由もありません。よくある失敗が、診断書の裏面(日常生活能力)の数字だけを「2級相当」に合わせて作成してしまうケースです。
医師も不支給の原因が診断書となると、批判の矢面に立たされるため、数字だけは2級に寄せて書くことがあります。
しかし、診断書全体の整合性(障害の状態や医師の所見)が取れていなければ、間違いなく不支給の判定が出ます。 この場合不服申し立ては可能ですが、数十年も前に遡り資料を集めるなどということがどこまでできるでしょうか?
重要なのは、診断書を依頼する「前」の段階です。 当時の実態を反映した資料をできる限り揃え、医師に「正確に当時の症状を反映した診断書」を書いてもらう。この準備をすることもなく、年金事務所の指示通りに、単に医師に診断書を渡すのみですべて医師任せにするのでは、採れたかもしれない受給権を、自分自身でドブに捨ててしまうようなものですじです。

4. 遡及請求は「1回勝負」。2回目はありません
「どうしても諦めきれないので、やり直してほしい」というご相談を、ここ数年、本当によく受けます。物価高騰等の影響もあり、多くの方々にとって生活環境が悪化していることも要因の一つでしょうが、現実は非情です。
一度不支給が決まった後の遡及の再請求は、多くの場合「重複請求」として門前払い(却下)されます。審査の土俵にすら上げてもらえないのが現実です。
さらに言えば、最初の請求段階で、「ダメなら不服申し立て(審査請求)をすればいい」というのも甘い考えです。
なぜなら、不服申し立ては、「最初に出した不備だらけの書類(診断書や申立書)をもとに戦う制度です。ご自身が不服申し立ての理由として、申立書の内容に「間違いがありました」「書いた内容は本当のところ○○でした」という言い訳をしたところで一切認めてはもらえません。なぜなら、誰でもない、自分自身が申し立てた内容だからです。自分自身の主張をコロコロと、後になって都合よく変えることはできません。
結論:「数百万円のお金を棒に振らないために」
何度も言いますが、遡及請求(特に精神疾患)の場合は、まず最初に社会保険労務士に相談をしてください。
遡及請求が認められれば、手元には数百万円単位のお金が手に入ります。 その10〜20%程度の報酬を惜しんでご自身で請求を行った結果、本来手に入るはずだった受給権を取り逃がす……これほど悔やんでも悔やみきれないことはありません。
「失敗してからでは、社労士でも救えません」
一歩を踏み出す前、できれば年金事務所に相談に行く前に、お近くの障害年金専門の社労士にご相談ください。多くの事務所は初回相談無料です。 医師が「書いてあげるから大丈夫」と言ったとしても、安心はできません。医師は障害年金の制度自体よく把握していない場合があります。
必ず一度、専門家の目を通すことを強くお勧めいたします。
社会保険労務士に相談をしてみて、それでもご自分で請求をされるようであれば、その旨社労士に伝え、契約を結ばなければよいだけの話です。
<ワンポイントアドバイス>
相談を受けた社労士が契約を急がせるようであれば、極めて遡及請求での受給の可能性が高いものと思います。ご自身で請求をされるかどうかは、自己判断で。
社労士が「う~ん」と悩むようであれば、難易度高めですので、できれば社労士に依頼された方が受給確率は高くなると思います。
社労士から「遡及請求は無理」と言われた場合、間違いなくご自身でされても結果は不支給です。どうしても諦めきれないようであれば、数件別の社労士事務所を回り、遡及請求を請け負ってくれるところをさがしましょう(不支給の場合、診断書作成費は無駄になりますが)。
以上、私自身、ご自分で請求されること自体、否定するつもりは一切ございません。
ただ、ここ数か月、本当にこの遡及請求での再請求依頼が増えており、そのうちの半数近くは、事前に相談を頂いていればほぼ間違いなく受給につなぐことができた案件です。社労士からすると、ありえないようなミスが原因で不支給になっています。
社労士事務所に電話をすると営業をかけられるかもしれない、契約を強引に迫られるかも、などと言った不安もあると思います。
そのような方は、障害年金支援ネットワークにご相談されてみてはどうでしょうか。社労士がボランティアで電話相談を行っています。強引な勧誘も一切ありません。








