<相談事例>
40代女性 精神 障害厚生年金3級受給中
Q:障害年金3級を受給中。知人から清掃の仕事をしないかと誘われている。働くと障害厚生年金は止まるのだろうか。少しでも働きたいとおもうのだが、現在も寝て終日過ごすこと多く、起き上がって仕事場まで行く気力もない。
A:就労しているからといって急に年金が止まることはありません。次回更新が2年後とのこと。次回更新までは年金は支給停止されないので、更新時に就労している場合は、勤務日数、労働時間に加え、職場での就労サポートの有無についても診断時に主治医に伝えておくことが必要です。
20代女性 精神 障害基礎2級受給中
Q:昨年認定されたばかりだが、本人が働きたいと言っている。正社員として内定をもらってきた。年金はもらっていていいのか。
A: 20歳前障害年金の場合は所得制限があります。また現在は年金は法定免除ですが厚生年金加入へと切り替わります。厚生年金加入者になったからと言って支給額が減額されることはありません。ご自身から言わない限りは会社に障害年金受給者であることをしられることもありません。次回の更新時に働き方によっては年金が支給停止される場合もありますので、職場での配慮や働き方について主治医に報告をし体調面も含めよく相談をしておく必要があります。
30代男性 精神 障害厚生年金3級受給中
Q:障害厚生年金3級を受給している。現在障害者雇用で働いているが、就労期間が5年にもなる。長い期間継続して働いていると,更新時に支給停止になるだろうか?作業時間は短くしてもらっており、作業内容も人と意思疎通を図らなくてもよい職場に回してもらっている。
A:医師には障害者雇用枠で働いている旨及び会社から仕事を続けていくうえで様々な配慮を受けている旨をよく伝え、診断書に反映してもらう必要があります。
30代男性 知的障害
Q:働くと障害年金は止まりますか?
A:働いて居ることをもって直ぐ年金が止まることは無く次回更新までは停止になりません。働き方の内容等を総合的に判断し決定される。一般就労ではなく、障害者雇用であれば支給停止になることはないと思われます。
障害年金請求及び更新時に就労状況が問題になるのは、主に精神疾患場合のです。他の病気の診断書には無い就労状況を精神の場合は書かされます。
給与額についても一般就労と障害者雇用では取扱いが異なります。更新時に一般就労で20万円前後の収入があり2~3年継続就労されていた場合は級落ちもしくは不支給の可能性が高いです(R5,R6年の請求事例より)。もちろん総合的な要素で判断されるため、その他の要素も加味されたうえで等級判断がなされているものと思います。
精神疾患で障害年金を受給しながら働くことについては、国の認定ガイドラインによって「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない」という明確な原則が示されています。
以下に、受給中の就労に関する考え方、注意点、および支給停止(年金が止まる)の判断基準についてまとめます。
1. 受給中に働くことの基本的な考え方
精神疾患(統合失調症、気分障害、知的障害、発達障害など)の場合、就労の事実は認定に影響しますが、それだけで支給の可否が決まるわけではありません。
総合判定の原則
仕事の種類、内容、就労状況、職場での援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分に確認した上で、日常生活能力が判断されます。
福祉的就労の扱
就労継続支援A型・B型や障害者雇用制度による就労については、原則として2級以上の可能性を検討することとされています。
一般雇用での就労
障害者雇用ではない一般企業での就労であっても、職場での手厚い援助(就労支援サービスと同程度の支援)を受けている場合は、2級の可能性が考慮されます。
2. どの時点で年金が止まるのか
障害年金には「永久認定」と「有期認定」があり、多くの精神疾患は数年ごとに更新(再認定)が必要な「有期認定」となります。年金が止まる(または等級が下がる)主なタイミングと基準は以下の通りです。
更新時の再認
提出された「障害状態確認届(診断書)」に基づき、障害の状態が従前より軽くなり、認定基準の等級に該当しないと判断された場合に支給が停止されます。
判断の基準(月収と実態)
一般企業(障害者雇用を除く)での就労の場合、単に月収の多寡だけでなく、就労の実態を総合的にみて判断されます。例えば、「安定して働けているか」「適切なコミュニケーションが取れているか」といった点です。
日常生活能力の評価低下
診断書において「日常生活能力の判定」や「程度」の評価が、ガイドラインの定める等級の目安を下回った場合、支給停止や減額の対象となります。
3. 就労に関する注意点
働くにあたっては、以下の点が審査において重要な考慮要素となります。
職場での援助と配慮
援助や配慮があるからこそ安定して働けている場合、その「援助がない場合に予想される状態」が考慮されます。もし援助なしでは働けない状態であれば、それは日常生活能力が低いとみなされるポイントになります。
就労の安定性
1年を超えて就労を継続できていたとしても、頻繁に欠勤・早退・遅刻があるなど、実態が不安定な場合は、その状況も考慮されます。
日常生活への反動
就労している影響で、仕事以外の場面(家庭生活など)で日常生活能力が著しく低下している(例:帰宅後は疲れ果てて何もできない等)場合は、その両方の状況が考慮されます。
診断書への記載
更新時の診断書には、現在の仕事内容や受けている配慮を医師に詳しく伝え、詳細に記載してもらうことが不可欠です。
以上、「援助や配慮を受けながら、あるいは体調を崩しながら無理をして働いている」といった実態が客観的に示されている限り、就労していることのみをもって年金が停止されることはほぼありません。
精神の障害に係る等級判定ガイドライン
就労状況について考慮すべき要素
共通事項
〇労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分
確認したうえで日常生活能力を判断する。
〇援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する。○ 相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。
○ 就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する。
○ 一般企業(障害者雇用制度による就労を除く)での就労の場合は、月収の状況だけでなく、就労の実態を総合的にみて判断する。
・ 就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。
・ 障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。
精神障害の場合
○ 安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。
○ 発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況を参照しつつ、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無などの状況を考慮する。
○ 精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する。
○ 仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する。
知的障害の場合
○ 仕事の内容が専ら単純かつ反復的な業務であれば、それを考慮する。
・ 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する。
○ 仕事場での意思疎通の状況を考慮する。
・ 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。
発達障害の場合
○ 仕事の内容が専ら単純かつ反復的な業務であれば、それを考慮する。
・ 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する。
○ 執着が強く、臨機応変な対応が困難である等により常時の管理・指導が必要な場合は、それを考慮する。
・ 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、執着が強く、臨機応変な対応が困難であることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。
○ 仕事場での意思疎通の状況を考慮する。
・ 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。
Q)医師から、「2級相当の診断書」と言って渡されたが、問題なく2級と判定されるのか?
A)残念ながら、医師が2級相当と言って作成した診断書で、程度非該当で不支給となる事案が増えています。
主な理由は、医師の言う2級相当とは、ガイドラインの目安を参考とした数字合わせだからです。
障害等級の目安 計算の仕組み
精神疾患における障害年金の認定は、医師が作成する診断書の記載内容に基づき、「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」という2つの指標を組み合わせて、等級の目安を算出します。
1. 「日常生活能力の判定」
平均値を出す診断書には、以下の7つの項目について、4段階(1点〜4点)で評価する欄があります。まずはこの平均値を算出します。
評価項目: 「適切な食事」、「身辺の清潔保持」、「金銭管理と買い物」、「通院と服薬」、「他人との意思伝達及び対人関係」、「身辺の安全保持及び危機対応」、「社会性」
点数配分
1点 … できる
2点 … おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
3点 … 助言や指導があればできる
4点 … 助言や指導があってもできない
計算例: 7項目の合計が21点の場合 21÷ 7 =3.0
2. 「日常生活能力の程度」
診断書にある、日常生活の困難さを5段階で評価する項目です。
<精神障害の場合>
(1) 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生 活は普通にできる。
(2) 家精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助 が必要である。
(3) 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必 要である。
(4) 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要で ある。
(5) 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必 要である。
上記2つの数値を、ガイドラインのマトリクスに当てはめる。
(例) 平均3.0 (4) 2級相当
ただし、あくまでも目安です。
医師の中には、このマトリクスでおおよその評価が決まると考えている方が相当数います。残念ながら、等級判定は総合評価できまります。
ガイドライン「障害等級の判定」
「障害認定基準に基づく障害の程度の認定については、このガイドラインで定める後記1の「障害等級の目安」を参考としつつ、後記2の「総合評価の際に考慮すべき要素の例」で例示する様々な要素を考慮したうえで、障害認定診査医員(以下「認定医」という。)が専門的な判断に基づき、総合的に判定する(以下「総合評価」という。)。
総合評価では、目安とされた等級の妥当性を確認するとともに、目安だけでは捉えきれない障害ごとの特性に応じた考慮すべき要素を診断書等の記載内容から詳しく診査したうえで、最終的な等級判定を行うこととする。
診断書は、記載されている内容をすべてチェックする必要があります。
一旦提出をし、不支給通知を受けてしまうと、不服申し立て(審査請求・再審査請求)の結果が出るまでに1年以上の時間を要します。
提出してから不安に思ったり、不支給決定を受けて後悔をする前に、一度障害年金を専門とする社会保険労務士にご相談下さい。
相談時に必要な物、「前回提出した診断書の写し」
*必ず医師に診断書作成依頼をする前にご連絡ください。
作成後、診断書を医師に修正させることは非常に難しいです。
精神疾患以外の傷病における就労の扱い
外部障害(眼、聴覚、肢体など)と内部障害(呼吸器、心疾患、腎疾患、がんなど)では、就労の捉え方が異なります。
① 外部障害(数値や欠損で判定される障害)
眼(視力・視野)、聴覚、肢体の欠損などは、診断書に記載される客観的な数値や状態(視力〇以下、足の切断など)によって等級が決定されます。
就労の影響: これらの障害は、「働いているかどうか」に関わらず、基準を満たしていれば認定されます。
例えば、全盲の方がバリバリ働いて高年収を得ていても、障害等級1級の受給に影響はありません。
② 内部障害・難病(病状や安静度で判定される障害)
呼吸器、心不全、人工透析、肝疾患、がん、難病などは、検査数値に加えて「一般状態区分表(ア~オ)」による日常生活や労働の制限度合いが重視されます。
2級の基準: 基準には「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とあり、これは「労働により収入を得ることができない程度」を指すと定義されています。
不支給の原因となる場合: 内部疾患で2級を目指す際、一般雇用でフルタイムの肉体労働を安定して行っていると、「労働に著しい制限がある」という要件に合致しないと判断され、不支給(または3級)となるリスクが高まります。
就労が「問題となる場合」と「ならない場合」の理由
なぜ傷病によって就労の扱いが変わるのか、その理由は「障害の測り方」の違いにあります。
問題とならない場合(機能・形態障害
眼や耳、手足の切断などは、障害の状態が「固定」されており、仕事ができるかどうかで障害の重さが変わるものではないため、就労は問題になりません。
問題となる場合(状態・能力障害)
精神疾患や内部疾患(がん、心疾患など)は、障害の重さを「どれだけ動けるか」「どれだけ社会生活に支障があるか」という「能力の制限」で測ります。
そのため、「現に安定して働けている」という事実は、審査側から見れば「日常生活能力や労働能力の制限が軽い」という強力な証拠になってしまうのです
裁決例からみる 精神障害と就労
就労不能でも3級認定
等級の目安では2級相当であるにもかかわらず、「家族の庇護を受けている」「初期量の抗うつ剤の処方がなされている」等を理由に、日常生活が著しい制限を受ける者に該当しないとされました。
2級非該当、3級と認定
等級の目安は2級相当。前回の診断書記載時との比較において「変化なし」とチェックされ、さらに「家族や就労支援スタッフとの交流は保たれている」と記載された。
その他不支給理由
・主治医が保険者からの照会に対し、請求期間中の特定の時点において「就労可能であった」と回答。
医師は、あえて休業を指示したことはなく、「できることから就労するように」と説明しており、本人の判断による休業であったことから、療養のための労務不能とは認められませんでした。
・障害者雇用ではなく、一般雇用で1年を超えて安定して就労できていた場合。日常生活能力が向上したとみなされます。
・仕事の内容が単純な反復作業ではない場合。 仕事場での援助や配慮(仕事内容の限定や意思疎通のサポート)を必要とせずに勤務できている場合。日常生活に著しい制限があるとは認められにくくなります。
・他の従業員との意思疎通が円滑で、適切な対人関係が築けていると判断されると能力障害の状態が軽い(3級以下)と解釈される傾向にあります。
・現症時において休職中であっても、福祉サービスを受けず、家族の援助を受けながら日常生活を送ることができている場合、それは「日常生活が著しい制限を受ける」とされる2級の基準には該当しないと判断されることがあります。この場合、労働が制限を受ける程度の「3級」には該当するものの、障害基礎年金(1・2級のみ)の場合は実質的に不支給となります。
ガイドラインでは「労働に従事していることのみをもって直ちに日常生活能力が向上したと捉えない」よう定めていますが、実際の運用では就労の継続性や職場での援助の有無が極めて重要な判断材料となっています。
「(支援を受けながらでも)働けている=日常生活能力が高い」とみなされ、不支給となるケースが増えています。
特に一般雇用での1年以上の継続勤務、職場での配慮不足、主治医の「就労」に対する認識のズレは、審査で致命傷となります。
ガイドラインと実際の運用には少なからず乖離もみられます。医師に手渡された診断書を確認もせず提出することは、リスクでしかありません。手遅れになる前に、まずは障害年金を専門とする社会保険労務士にご相談ください。








