医師照会は障害年金請求後に医学的判断が必要となった場合に行われます。保険者が職権で診断書作成医に直接行うこともありますが、たいていは請求人もしくは代理人を経由して行われます。
「年金請求書にかかるご照会」が請求者または代理人に送付されてきます。
社労士が代理で行った場合、社労士宛にまず年金事務所から連絡があり、その後に書類一式が送付されてきます。
医師照会が求められる場合
- 1年以内に再請求をした場合
- (精神)記載された症状と日常生活能力の判定との間に疑義が生じた場合
- 請求にかかる傷病に対する症状の記載が少ない場合
- 作成医療機関を受診してからまだ日が浅い場合
- 診断書作成時に薬が変更になりその効果を見極めたい場合
- 病歴や受診についての記載がわかりにくい場合
- 1枚の病歴申立書に複数の傷病についての記載があり状況がよくわからない場合
- 重要箇所に不備や記載漏れが多数ある場合 等
照会があると、本来の審査機関以外に作成の手間等余計な時間がかかってしまい、その分決定までの期間が長くなるなります。照会書類の提出期限の設定時期にもよりますが、2~3カ月余計に時間がかかります。
請求前に提出書類に不備がないか見直すことが重要ですが、そもそもご自身でされる場合は、なかなかその点(審査を受ける上での注意点)を見極め対処することは難しいのが現実です。
なお、書類には不備はなくても、照会がくることがあります。
精神疾患の場合、「日常生活及び就労に関する状況について」の照会があります。
作成にあたっては、ご自身の辛い状況や出来ない事の主張がメインとするのではなく、ご自身が受けているサポート、誰からどのようにサポートしてもらっているかをしっかりと記入していく必要があります。取っ手付けたような内容では信憑性が疑われますので、自分自身が日常生活を送る上でどのような困難を抱え、それを誰にどのように手助けしてもらっているか具体的に書いていかなくてはなりません。

診療録(カルテ)の提出
昨今、精神疾患での請求時に医師照会としてカルテの提出依頼が増えています。
クリニック・病院から提出される診療録も様々です。問診の内容をある程度具体的に記載したものを提供してくれる場合と、要約したものだけの写しを渡される場合があります。
提出したカルテの写しは当然ながら、障害年金等級の判断材料として使われます。問診内容に記載されていた内容の一部を切り取り不支給理由として挙げてくる場合もあります。
当事務所が対応した事案でも、カルテ内において「笑顔が増えている」「久しぶりにゲームを2~3時間した」「最近眠れている」等揚げ足取りのように切り取り、等級を下げ、もしくは不支給とする事案が発生しております。
一方、診療録を要約した写しのみの場合、どのような視点で要約されているのかにより記載内容が大きく異なっています。そもそも問診(医師と患者のやり取り)内容にしても、会話のすべてが記載されているわけでもありません。
依頼者の中には「次に待っている患者が気になる」「医師の顔色を窺って話している」ような方もいて、診察時にご自身の症状を伝えられていない方も大勢います。
問診内容を詳細に記したカルテと簡略化されたもののどちらが診査に有利かは一概に言えません。要はどのようなことが記載されているかです。そのあたりは提出した診断書や申立書を踏まえたうえで総合的に判断していくしかありません。
精神疾患で障害年金請求を行う予定の方は、今後とも増えるであろう診療録の開示請求にも対応できるよう、問診時にしっかりとご自身の症状を医師に伝えておく必要があります。「最近眠れますか?」と聞かれ「眠れます」とだけ答えると、睡眠は安定しているととらえられる可能性があります。眠るために睡眠薬をどの程度服用したのか、途中覚醒はあるのか、悪夢は見るのか、起きた時の体調は等しっかりと伝えておく必要があります。
医師照会の理由が不明確であったり、過剰要求であると思われる場合は年金事務所等に連絡の上提出を拒否するという選択肢もあります。
精神疾患の場合、上述した「日常生活及び就労に関する状況について」は等級判断に大きな影響を与えます。
照会の対応について自身がない場合はお一人で悩まず一度ご相談下さい。当事務所では、審査途中の医師照会事案からでも請求代行は可能です。